墨出しとは|施工管理1年目が最初に押さえること
配属されたばかりで、床に引かれた赤い線が何なのか分からない。職人さんの会話に出てくる「陸」「逃げ」「親墨」が聞き取れない。そういう段階の方に向けて書いています。なぜその線が必要なのかが分かると、名前も自然に覚えられます。
図面は現物に写さないと使えない
図面には「柱はここ」「天井の高さはここ」と書いてあります。しかし現場の床には何も書いてありません。
図面の寸法を、実際の床や壁に線として写す。これが墨出しです。コンクリートの床に引かれた線を頼りに、型枠が建ち、鉄筋が組まれ、間仕切りが立ちます。
大事なのは、墨が1cmずれれば、その上に載るものはすべて1cmずれるということです。しかも後工程で気づいたときには、直すには壊すしかありません。だから墨出しは工事の最初にある品質だと言われます。
工事の流れで覚える
墨出しは1回で終わりません。工程が進むたびに必要になります。順に見ていきます。
更地のとき — 遣り方
何もない土地では、建物がどこに建つのか誰にも分かりません。そこで杭を打ち、板を水平に渡して、建物の位置と高さの基準を組みます。これが遣り方です。
位置は配置図から、高さはベンチマークから移します。ここが工事全体の原点になります。
杭を打つとき — 杭芯出し
杭の中心位置を地面に示します。杭は打ち直しが利きません。位置がずれると基礎の設計をやり直すことになります。
掘削の途中で目印が消えることがあるので、離れた位置に控えの点を取っておきます。これを知らずに目印だけ頼りにすると、消えた時点で分からなくなります。
躯体が始まったら — 基準墨と子墨
基礎ができると、基準はコンクリートの上に移ります。
まず、その階全体の原点になる線を引きます。これが基準墨です。親墨とも呼びます。次に、そこから測って柱や壁の位置を示す線を引きます。これが子墨です。
ここで最初に覚えるべきことがあります。子墨は必ず基準墨から測ります。 すでに引いてある子墨から次を測ると、誤差が連鎖して端に行くほど差が開きます。急いでいるときほどここが崩れるので、意識して見てください。
高さは陸墨で管理する
壁面に水平な線を引きます。床仕上げ面から1000mmの位置に引くのが一般的で、「1mの陸(ろく)」と呼ばれます。天井や開口部の高さは、すべてこの線から測ります。
なぜ床から直接測らないのか。床が水平ではないからです。 コンクリートの床には数mmから十数mmの不陸があります。床を基準にすると、部屋の端と端で天井高が変わります。
階が上がるほど量が増える
低層のうちは1フロアずつ進みます。上層階に入ると、下の階で仕上げが始まり、上の階で躯体が進む。同時に墨を出す面が増えていきます。
自社の人員は増えないのに作業面だけが増える。墨出しの応援を頼む相談がいちばん多いのが、この局面です。
仕上げのとき — 仕上墨
内装の間仕切りや設備の位置を示します。ここだけ性質が違います。
躯体には施工誤差があるため、図面どおりの寸法をそのまま引くとは限りません。躯体が20mm内側に寄っていたとき、壁の通りを優先するのか、開口の寸法を優先するのか。この判断は現場でしか決まりません。
仕上墨は、図面を読む力と納まりの知識の両方が要ります。若手がいきなり任される作業ではありません。
聞き慣れない言葉の正体
現場で飛び交う言葉の多くは、上で説明したものの略称です。
「親墨」は基準墨。「陸(ろく)」は陸墨。「逃げ」は逃げ墨で、本来の位置に線が引けないときに一定距離ずらして引いた線です。柱の芯に線を引いても柱が建てば隠れるので、500mmや1000mm逃がします。
逃げ墨には必ず逃げた寸法が書いてあります。 数字のない逃げ墨は、次に見る人には芯墨と区別がつきません。もし現場で数字のない逃げ墨を見たら、確認したほうがいい。
土木では丁張と呼ぶ
同じ役割の作業を、土木では丁張と呼びます。掘削や盛土の位置・高さ・勾配を、杭と板で現地に示します。
建築の遣り方と似ていますが、大きく違うのは勾配そのものを表現する点です。法面の傾きを板の角度で示す法丁張のように、傾きを目で読めるようにします。
最初に身につけるとよいこと
言葉を覚えるより、次の2つを体で覚えたほうが早く役に立ちます。
基準に戻る癖。 測るときは必ず基準墨から。近くの線から測らない。
書いてあることを疑わない、が確認はする。 逃げ墨の数字、陸墨の高さ、基準墨がどの通り芯から何mm逃げているか。現場に入ったら最初にこれを確認する習慣をつけると、寸法の読み違いがほぼなくなります。