墨出しを外注するとき、何を決めて何を伝えるか
来週から躯体が2フロア同時に動く。自社の墨出し要員は2人。このままだと型枠が待つ。そう気づいた時点で外注を探し始める方に向けて書いています。この記事は「外注すべきか」ではなく、外注すると決めたあと、何を決めて何を伝えれば話が早いかを扱います。
電話口で必ず聞かれる4つ
墨出しの応援を頼むとき、受ける側が最初に確認するのは次の4つです。ここが揃っていないと、対応できるかどうかの返事すらできません。
図面は要りません。この4つだけで、対応できる会社があるかどうかは判断できます。逆に言えば、この4つが決まっていない段階で電話をしても、話が前に進みません。
とくに4番目が抜けやすい。「墨出しをお願いしたい」だけでは、必要な技能も人数も決まりません。基準墨を出すのと、躯体の施工誤差を吸収しながら仕上墨を納めるのとでは、入るべき人が違います。
決まらない依頼に共通すること
手配する側から見ると、断らざるを得ない依頼にははっきりした型があります。
前日・当日の依頼
人が空いていても、書類が間に合いません。詳しくは後述しますが、これが最も多い理由です。
現場住所が「名古屋市内」で止まっている
墨出しの応援は、対応地域を持つ会社に当たっていきます。「名古屋市内」では、中区の会社にも守山区の会社にも同じ確度でしか当たれません。区まで分かれば、その地域を得意にしている会社から順に当たれます。
工程が決まっていない
「とりあえず2人」という依頼は、実は最も手配しにくい。何をする2人なのかが分からないと、職長クラスを出すべきか、手元でよいのかが判断できません。過剰な体制で見積を出すことになり、金額でも折り合わなくなります。
期間が読めていない
1日だけの応援と、3か月継続して人を置くのとでは、受ける側の判断がまったく違います。継続なら他の現場との調整をしてでも人を作れますが、単発の1日は空いている人がいなければそれまでです。
書類が作業日程より先に律速になる
これが、急ぎの依頼でいちばん詰まる場所です。
新しい会社を現場に入れるには、安全書類の提出が要ります。作業員名簿、資格の写し、保険の加入状況。一定規模以上の工事なら施工体制台帳への記載と再下請負通知も必要です。
人が確保できても、書類が通らなければ入場できません。 慣れている会社はテンプレートを持っていて即日出せますが、慣れていない会社は往復で数日かかります。
外注先を選ぶ段階で、過去にどの元請の現場に入ったことがあるかを聞いておくと、この見当がつきます。書類の話を先にできる会社は、入場までが早い。
墨出し屋に頼む場合と、測量会社に頼む場合
同じ「墨出しの外注先」でも、出自によって守備範囲が違います。
墨出しを専門にしてきた会社は、建築の墨出しに強い。数をこなしているぶん、割付の判断が速い。
一方、測量から入ってきた会社は、座標で扱うことに慣れています。トラバース測量で基準点網を張る、KBMを設けて高さを管理する、トータルステーションで通り芯を出す。広い現場や、複数棟が離れて建つ現場、外構の丁張が絡む現場では、この差が効いてきます。
どちらが優れているという話ではありません。現場の性質に合うほうを選ぶという話です。判断の目安を挙げます。
| 現場の条件 | 向いている外注先 |
|---|---|
| 中低層1棟、割付が細かい内装中心 | 建築の墨出しを専門にする会社 |
| 敷地が広い、複数棟が離れている | 座標で管理できる測量系の会社 |
| 外構や造成の丁張が絡む | 土木の丁張を扱える会社 |
| 出来形計測や土量計算まで頼みたい | 測量系の会社 |
| i-Construction 対応の現場 | 点群や3次元データを扱える会社 |
見積を受け取ってから確認すること
金額そのものより先に、範囲が揃っているかを見ます。
1人工に法定福利費が含まれているか。交通費は別途か。土日祝や早朝・夜間の割増条件はどうか。対象の工程はどこまでか。この4つが会社ごとに違うため、総額だけを並べても比較になりません。
法定福利費は、値引きの対象にしてよい性質の費用ではありません。建設業では下請の見積書に内訳として明示する取り扱いが求められています。ここが書かれていない見積は、後で差額の話になります。
単価の中身については「墨出しの単価が見積を見ないと分からないのはなぜか」で詳しく書いています。
相談の段階で伝えておくと違うこと
確定していなくても構いません。
「来月から2棟同時になる。まだ確定ではないが、人が足りなくなるかもしれない」
この一報があるだけで、受ける側は人の段取りを考え始められます。確定してから電話をすると、そこから探すことになります。外注の相談は、決まってからするものではありません。